以前から一度は訪ねてみたいと思っていました。世界文化遺産に登録された有名な観光地ですが、私は高山までは数回来ていますが、白川村まで足を延ばすチャンスがありませんでした。退職して時間が十分あってもなかなか実現できなかったのですが、今回は思い切って出かける事にしました。
この白川郷についてはテレビや書簡で見聞きしていましたので、何となく頭の中ではぼんやりと理解していた所でしたが、やはり実際に訪問すると更に興味が尽きません。
白川郷は多くの皆さんが訪れていますので今更紹介も無いのではと思いますが、私なりに認識を新たにした旅行でした。
現在は高速道路などが出来て車でのアクセスも便利になっていますが、私は名古屋から高山まで列車で来て、更に高山からバスツアーに参加してみました。バスツアーは決まったところでしか止まってくれませんが初めての所はこれで十分です。さらに良いのはツアーのガイドさんがいろいろ説明をしてくれますので多少は前知識が詳しくなって助かります。
　１９９５年にユネスコの世界文化遺産として登録され、世界的にも日本の古い民家の集落として注目を集めました。
この雪国独特の建築様式は古くからそこに住む人たちの知恵と巧みな建築技術によって培われてきたのものですが、なかなか見事なものであり、更に今でもまだそこに生活する方たちがいると言う事にも驚かされます。
１９６７年に白川村のある集落の集団離村を契機に白川村が白川郷合掌村の民家の保存モデルを計画したのが始まりのようです。その後現在の荻町地区が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、更に世界文化遺産に登録された経緯があります。
また古いこの地は民謡のふるさとでもあり白川郷、五箇山とも多くの民謡が歌い継がれています。バスガイドのお姉さんが歌ってくれた民謡もなかなかでした。

合掌造りは外から見た目以上に内部の空間が大きく、部屋数も多くあり、生活する家族が３０人とか４０人ぐらいの家もあったようで、建物そのものが日常の生活の場と生計を営む生産の場とを兼ねた建物なのです。
それだけに多くの人が協力して生活していく必要があったのでしょう。
居間には炉が切られていて、寒い日は暖を取りながら家族が語らっていた風景が想像できます。
厚い茅葺の屋根は傾斜６０度で正三角形をしており、雪が滑り落ちやすく雪の重みで潰れないように工夫されています。したがって雪下ろしは唯一屋根のてっぺんの少し水平になったところだけ下すのだそうです。
現在は多くの方々が生活していますが、既に養蚕はしていませんので、農林業と民宿や土産物店など営んで生計を立てています。
しかし各地の農村のように多くの若者がこの地を去り、地域の高齢化が進んだため、屋根葺きの手作業も人手不足でが不足し、今は機械を使った専門の業者に頼むことが多くなりました。しかしこの独特の屋根のつくりの細部仕上げにはやはり地元の匠が必要です。
一方で観光客は年間で百数十万人の人たちが押し寄せ、そのために生活の場が荒らされないようにするのも大変なようで、ある程度の観光客への規制もあります。また一方で観光客のために環境を整えようとすると逆に地域の方々の生活環境が悪くなるというジレンマもありそうです。

合掌造りの大きな特徴はこの茅葺の屋根にあります。
夏の暑さから居住空間をこの屋根が防いでくれますし、上部に空いた窓は作業の為の明かりと、蚕の生育に必要な気温と風通しが確保できます。
　天井は見ての通り釘が一本も使われず、縄と木だけで作られており、使う材木も冬の雪の重みに耐えた頑丈な木を選んで作られています。
　また冬は炉で火を焚きますが、その煙が上の階層の部屋に上がるように天井の一部が網目状になっています。この上がった煙のタール分が屋根萱の防腐に一役買っています。
これは素晴らしい工夫ですが、蚕を飼うのに問題じゃないですかと尋ねたら、煙は冬だけですからと一笑されました。ははは・・・
しかし最近は炉でなくあまり煙の出ない石油ストーブが使用されるので、この防腐効果も下がっているそうです。
屋根の萱は１５年から２０年毎に葺き替えられ、その時は住民総出で作業を行いますが、前述したように労働力が不足しますので各地からボランティアを募り実施されましたが、しかしこれには相当の費用が掛かります。数年前この地区の代表的な大きな家屋の萱の葺き替えには凡そ４千万円の費用が掛かったそうです。この建物群を保護するために国や県の援助がなければ到底維持は難しいという事で住民の方たちにとっては複雑な問題がありそうです。

国の重要文化財の和田家の大型建物ですが、庭や倉庫などを備えた作りの素晴らしさに感心しました。